航空大学校

2011/7/28 JA4215

投稿日:2017-07-29 更新日:

パイロットになりたい熱意が先行し、航空事故に遭遇する可能性を過小評価していました。考えたこともありませんでした。他の記事に比べて内容が重く辛いです。

アメリカの国家運輸安全委員会 (NTSB) の行った調査によると、飛行機を利用する際に死亡事故に遭う確率は、0.0009%と相当の低さを誇っています。

しかしながら、訓練生ともなるとそうは行きません。

私が所属する航空大学校でも1974年から20件の事故が起きています。

直近でいうと2011年7月28日に帯広で学生1名、教官2名が死亡、学生1名が重傷となる事故が起こりました。

昨日、7月28日、帯広分校ではこの事故についての追悼式が行われたようです。ご遺族や亡くなられた学生の同期の方々が追悼式に来られ、関係者による献花が執り行われ、ご遺族の方はその場で涙を流していたそうです。亡くなられた1名の方を除き、重傷を負った方を含め同期17人全員がエアラインパイロットとして活躍をされているそうです。同期の方々を見ると、亡くなられた1名がパイロットとして活躍している姿が容易に想像できるだけに、6年を経っていても未だ当事者・関係者の傷跡は癒えないし、癒えることもないでしょう。

航空、鉄道及び船舶の事故・重大インシデント(事故が発生するおそれがあると認められる事態)は、再発防止、被害軽減を目的として運輸安全委員会(JTSB)によって調査・報告が行われます。

この帯広の事故についても同委員会による報告が行われています。

報告書(PDF)内の事故に至るまでの描写は生々しく、仮に自分が機内にいたらと想像すると目を背けたくなるような内容です。

この事故の原因は以下の様にまとめられています。

本事故は、有視界飛行方式下での基本計器飛行訓練としてフードを装着した学生の操縦する同機が、教官の指示どおりに飛行して山岳地帯に進入し、山を覆う雲に接近又は入ったため、機外目標を失い、山との間隔が教官が考えていたよりも近づいていることに気付かず、地表に異常に接近し、教官が学生から操縦を代わり山を回避しようとしたが、適切な方向に回避することができず、山腹に衝突したものと推定される。

 教官が山を覆う雲に接近又は入ったのは、何らかの意図を持って行われた行為であった可能性が考えられるが、本人死亡のためその意図を明らかにすることはできなかった。

 同校においてこのような事態が発生したことについては、安全管理体制が適正に機能せず、同校の理念から離れ、管理職と現場との間で安全に対する意識のずれが生じ、不安全行動を見過ごしてしまうような職場環境・組織風土であったという組織的な問題が関与した可能性が考えられる。

有視界飛行方式…雲から定められた距離・視程の確保、地上の視認をしながら行う飛行の方式で、航空法・航空法施行規則に定義された方式

計器飛行…航空機の姿勢、高度、位置および針路の測定を、航空機上の計器のみに依存して行う飛行のことを指し、基本計器飛行訓練とはこの計器飛行の初歩的な訓練を指します。

特にこの事故で問題となったのは、後席に同乗していたもう一人の教官・学生が、雲に接近または入っていることについて指摘を行わなかった点です。言うことの出来ない、言わせないような職場環境・組織風土が指摘されています。

事故後、航空大学校では2度と同様の事故を起こさないよう、学生向けに対してはCRM(Crew Resource Management)教育、安全講話、TEM(Threat and Error Management)の実践、JUST CULTURE(Sidney Dekker)の構築など様々な対策を講じています。本当に学生向けの教育は徹底されていて、航空業界の2度と同じ過ちを犯さないという業界風土を尊敬しています。教官向けの対策はよく分かりません。

現在フライト学生として訓練を行っている先輩曰く、雲に入るような教官は一人もいないし、危険な目に合ったことはないそうです。しかしながら、各教官によって考え方や指導方針が異なり、上空に行ってしまえば密室で、航空大学校の理念が全ての教官に浸透しているとは思えない、信じられないほど怒鳴る教官も中には存在していて、アサーションをしにくい環境であるとの声もあります。

航空大学校の学生として、6年前の事故については文面や人伝いでは見聞きしておりますが、どうしても実感が湧かず、他人事の様に事故を捉えていました。この7月28日に見聞きしたこと感じたこと思ったことを忘れずに、航空大学校の学生、訓練生、パイロットとして安全運航に努めます。

-航空大学校
-, ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

no image

航空大学校と出身大学や試験対策方法

1次試験を合格された受験生の皆様、おめでとうございます。また、今回残念ながら上手くいかなかった方々も次の機会に向けて萎れずに頑張ってください。圧倒的にパイロットが足りない現状では、航空大学校以外にも私 …

no image

航空大学校入学試験対策・1次試験

あと1ヶ月もすれば航空大学校の1次試験です。 1次試験の結果は最終順位まで影響するし、1次試験の結果が良いと2次身体検査の基準が甘くなるという噂もあるのでできるだけ良い成績を残した方が良いでしょう。 …

no image

入寮日

航空大学校の合格発表から何ヶ月もの月日が経ち、遂にこの日がやってきました。あまりにも合格発表から月日が経ち過ぎていて、自分が本当に航空大学校に入学できるのかと不安になってしまうほどでした。

no image

航空大学校の学費・生活費

私立大学の航空機操縦士養成課程と比べ、航空大学校の学費は割安と思われているので、入学にあたってお金の心配をしている人は少ないと思います。 しかしながら、実際に航空大学校の学生として生活をしてみると、意 …

no image

パイロット・航空大学校の志望動機

本当は自社養成に行きたかったけれど、落ちてしまったのでやむなく航空大学校に来たという消極的な志望理由ですが、航空大学校3次試験の面接カードや自社養成エントリーシートの参考にして頂けると幸いです。

プロフィール

偏差値約60の学部生→パイロット訓練生

ブログでは、学習したことの備忘録、訓練生生活で感じたこと、航空業界に対して思うこと、旅行記などを書いています。

Comments

アーカイブ

カテゴリー